
こんにちは。大阪・肥後橋でパーソナルピラティススタジオを経営している、株式会社SPARX代表、ピラティストレーナーの杉直樹です。
診療や処置では、ほんのわずかな変化を見逃さない集中が求められます。視線を近くへ集め、手指を正確に動かし、患者さんの言葉にも耳を傾ける。その時間が続いたあと、「手は止めたのに身体の緊張が抜けない」と感じるドクターもいらっしゃるのではないでしょうか。
肩を回しても、腕を伸ばしても、どこか仕事の姿勢が残っている。帰宅してからも呼吸が浅く、頭の中では診療が続いている。これは気持ちの問題だけではなく、責任を果たすために選び続けた身体の使い方が、すぐには切り替わらない状態かもしれません。
私自身、指導とスタジオ経営を両立するなかで、集中できることと、集中を解けることは同じくらい大切だと感じています。今日は、細かな仕事のあとに手だけを休ませるのではなく、呼吸と身体全体から次の時間へ移る考え方をお伝えします。
【目次】
- 細かな処置の緊張は手だけに残らない
- 手を支えている身体全体を見る
- 診療後に確認したい三つのサイン
- 短い切り替えを行動として決める
- 目的から逆算して休み方を選ぶ
- 個別指導だから確認できること
- 肥後橋で白衣の外の身体へ戻る
細かな処置の緊張は手だけに残らない
手指を正確に使うとき、働いているのは手だけではありません。視線を安定させるために首が動きを抑え、肩甲骨周りが腕を支え、体幹と足元が姿勢を保ちます。処置台やデスクに合わせて前かがみが続けば、息を止めるように集中することもあります。
その場では必要な反応です。問題は、仕事が終わっても同じ力の配分が続くこと。腕を下ろしていても肩が上がり、指を開いても肘が固く、ソファに座っても背中が休まらない場合があります。
「慣れている」と「負担がない」は違う
毎日行う姿勢は、違和感があっても普通になりやすいものです。慣れているから悪いのではありません。まず、どんな場面で力が集まり、どこが動きを補っているかを知ることが大切です。現在地を責めずに把握できれば、次に選べる行動が増えます。
肥後橋の現場で感じるのは、責任ある方ほど、不調を感じても「まだ仕事はできる」と後回しにしやすいことです。しかし仕事ができるかどうかだけでなく、診療後に家族と話す余裕があるか、眠る準備へ移れるかも身体の大切な役割です。
手を支えている身体全体を見る
手首や肩だけを伸ばして楽になる日もあります。ただ、同じ場所へ緊張が戻るなら、胸郭、背骨、骨盤、足元まで含めて見る価値があります。腕は肩甲骨につながり、肩甲骨は胸郭の上で動きます。胸郭の動きには呼吸が関わり、姿勢は足元から支えられています。
ピラティスでは、部分を孤立させず、身体のつながりの中で動きを確認します。たとえば腕を上げるとき、肩だけで頑張っているのか、背骨や肋骨が無理なく協力できるのか。手を使わない動きでも、結果として腕の使いやすさを考える材料になります。
「肩を下げなければ」「姿勢を正さなければ」と固定することが目的ではありません。診療では安定が必要でも、仕事のあとまで固定し続ける必要はない。場面に合わせて動き方を選び直せることを大切にします。
診療後に確認したい三つのサイン
一日の終わりに、次の三つを短く確認してみてください。点数をつけるのではなく、その日の身体から情報を受け取るための確認です。
- 手のひら:指を開いたとき、親指や手首まで力が抜ける余地があるか。
- 肩とあご:奥歯を噛みしめ、肩を耳へ近づけたままになっていないか。
- 吐く息:吸うことを急がず、細く静かに吐く時間を持てるか。
左右差や動きにくさがあっても、すぐに異常と決める必要はありません。「今日は右手に力が残っている」「吐くときも肩が下がりにくい」と分かるだけで十分です。理想との差は自分を責める材料ではなく、次の一歩を選ぶ情報です。
なお、強い痛み、しびれ、筋力低下、胸部の違和感、急な体調変化がある場合は、運動で様子を見ず、適切な医療機関へ相談してください。ピラティスは診断や治療の代わりではありません。
短い切り替えを行動として決める
「余裕があれば休もう」では、忙しい日は休む順番が回ってきません。私は長く、目標を実現する考え方や、自分が選べる行動について学んできました。そこで経営にも身体づくりにも共通すると感じるのは、望む状態を願うだけでなく、その状態につながる小さな行動を先に決めることです。
一、手を置いて足裏へ意識を移す
診療が終わったら、机やスマートフォンから手を離し、両足が床へ触れる感覚を確認します。頭と手に集まっていた注意を、身体の土台へ戻します。
二、肩を下げずに息を吐く
肩を無理に下げるのではなく、口から静かに息を吐きます。肋骨が少し内側へ戻り、次の息が自然に入るのを待ちます。大きな深呼吸にしなくても構いません。
三、次の時間の目的を決める
「帰宅後は家族の話を聞く」「会食では相手へ関心を向ける」「今日は休む準備を優先する」など、次の時間に大切にしたいことを一つ決めます。目的が変われば、身体に必要な状態も変わります。
目的から逆算して休み方を選ぶ
休むことを、仕事を止めることだけだと考えると、責任感の強い方ほど後回しにします。しかし休息は、次の診療や生活でどのように在りたいかから逆算して選ぶ行動です。
私が24歳で独立して以降、予定が多い時期ほど「何のためにこの時間を使うのか」へ戻るようにしてきました。やることを増やすだけでは、望む結果へ近づくとは限りません。ピラティスも種目数を増やすことが目的ではなく、仕事と人生で望む動きを支えるために行います。
予定どおりに整えられない日もあります。その日を失敗で終わらせず、「今日は一分だけ呼吸を確認する」「次の予約を取り直す」と選び直す。継続とは、崩れないことではなく、目的へ戻る力を持つことだと思います。
個別指導だから確認できること
同じ診療職でも、立位が多い方、座って細かな作業が続く方、移動の多い方では身体の使い方が違います。専門、診療環境、運動経験、既往歴によっても必要な配慮は変わります。
パーソナルピラティスでは、まず生活と目的を聞き、呼吸、立ち方、腕の動き、背骨や骨盤の協調を確認します。できない動きを指摘するのではなく、これまで仕事を支えてきた身体の使い方を尊重しながら、別の選択肢を増やします。
- 腕を上げると首が先に緊張する
- 呼吸を深くしようとすると腰を反る
- 左右で肩甲骨の動きの感じ方が違う
- 診療後も手指へ力が残りやすい
こうした傾向を一緒に確認すると、スタジオ外でも自分の状態へ気づきやすくなります。レッスン中に美しく動くこと以上に、日常でご自身が選べる行動を持ち帰ることを重視しています。
肥後橋で白衣の外の身体へ戻る
私は29歳で肥後橋にスタジオを開きました。梅田、淀屋橋、本町からも動きやすい場所で、責任を担う方が役割から少し離れ、自分の身体へ意識を戻せる時間をつくりたいと考えてきました。
ドクターは、患者さんの状態を見ることには慣れていても、ご自身の身体は「まだ大丈夫」と後回しにしがちです。診療へ集中する身体も、家族と過ごす身体も、趣味を楽しむ身体も一つです。仕事のためだけでなく、白衣の外にある時間のためにも、切り替えられる身体を育ててほしいと思います。
週単位で身体の変化を振り返る
日ごとの感覚は、診療件数や睡眠、移動によって変わります。一日だけを見て結論を出さず、一週間ほどの幅で「どの曜日に肩へ力が集まりやすいか」「休診日の翌日は呼吸が違うか」「どんな処置のあとに首を動かしにくいか」を振り返ると、自分に合う整え方を考えやすくなります。
ここでも大切なのは、原因を一つに決めつけないことです。仕事だけでなく、睡眠、生活環境、既往歴など複数の事情が関わります。記録は自分を管理しすぎるためではなく、選択肢を増やすために使います。短いメモでも、次のレッスンで共有できれば、その日の内容をより具体的に組み立てられます。
そして、身体が楽だった日には「何が良かったか」も確認してください。不調ばかり探すより、うまくいった行動を再現できる方が前向きです。小さな成功を積み重ねることは、診療と生活のどちらにも余白をつくる助けになります。
「診療後も手や肩の緊張が残る」「休んでいるのに仕事の姿勢が抜けにくい」と感じる方は、まず現在の呼吸と動きを一緒に確認してみませんか。運動経験や柔軟性に自信がなくても問題ありません。